566: 名無しさん 2021/09/20(月) 17:41:28.64
著者 ラケシス
雪原に散った、季節を問わぬ真っ赤なバラの花びら。
我にかえれば、それは寝台に滴り落ちた血の雫。
夜は明けようとしていた。
だが俺は数刻前の時間に、捕われていた。
「陛下、姫様は無事、シルベールをお出になりました」
「ああ」
誰かの声が、俺の頭の中でうつろに響く。
これは、もう、俺の中で絶対なことなのだ。
今日、停戦を奏上する。
腰抜けと嘲られ、腰抜けは必要無いと罵られ、無名の騎士の剣にかかるだろう。
それで終わり、それでよいのだ。
数時間前まで、彼女はここにいた。
俺の運命を悟って、知らず震えている肩を抱いてくれた。唇を許し、肌を許し、赦されぬ血の円環をともに作り上げた。
その瞬間、彼女は小さく叫んだ。破瓜に歪むその表情すらもたまらず愛おしくて、俺は泣いてしまった。
「…お兄様、泣いていらっしゃるの?」
小さい声だった。
「泣かないで下さいまし、お願い。
もう会えないのではないのでしょう?
お願い、お兄様」
彼女は抱きすくめた俺の耳もとのあたりに、息のような声を吹き掛けた。
俺は、情けのほとばしるままに、その小さなからだの奥深くに万感の思いを刻み込んでいた。
雪原に散った、季節を問わぬ真っ赤なバラの花びら。
我にかえれば、それは寝台に滴り落ちた血の雫。
夜は明けようとしていた。
だが俺は数刻前の時間に、捕われていた。
「陛下、姫様は無事、シルベールをお出になりました」
「ああ」
誰かの声が、俺の頭の中でうつろに響く。
これは、もう、俺の中で絶対なことなのだ。
今日、停戦を奏上する。
腰抜けと嘲られ、腰抜けは必要無いと罵られ、無名の騎士の剣にかかるだろう。
それで終わり、それでよいのだ。
数時間前まで、彼女はここにいた。
俺の運命を悟って、知らず震えている肩を抱いてくれた。唇を許し、肌を許し、赦されぬ血の円環をともに作り上げた。
その瞬間、彼女は小さく叫んだ。破瓜に歪むその表情すらもたまらず愛おしくて、俺は泣いてしまった。
「…お兄様、泣いていらっしゃるの?」
小さい声だった。
「泣かないで下さいまし、お願い。
もう会えないのではないのでしょう?
お願い、お兄様」
彼女は抱きすくめた俺の耳もとのあたりに、息のような声を吹き掛けた。
俺は、情けのほとばしるままに、その小さなからだの奥深くに万感の思いを刻み込んでいた。
572: 名無しさん 2021/09/20(月) 17:43:24.32
>>566
自分が死んだ後にこんなもん出されたんじゃ、エルトシャンも死んでも死にきれないな
自分が死んだ後にこんなもん出されたんじゃ、エルトシャンも死んでも死にきれないな
610: 名無しさん 2021/09/20(月) 18:09:19.18
>>566
自分で考えてそれ書いたなら
気持ち悪いよ君
自分で考えてそれ書いたなら
気持ち悪いよ君
678: 名無しさん 2021/09/20(月) 18:46:17.52
>>566
エルトシャン亡き後のラケシスの妄想?
エルトシャン亡き後のラケシスの妄想?
574: 名無しさん 2021/09/20(月) 17:44:46.93
「…」
支度を再び整えて、彼女は再び、高雅さこの上ない王女の姿になった。
理想の姿を求めて、はたしてその通りに、天使妖精もひれ伏すその姿に、俺は呆然とする。
これが、彼女の本当の姿だったのかと、俺は言葉を失うよりなかった。
限りなく清らかに、毅然と立ち、そして艶やかに。
俺は、「器」であることを、彼女に強いていたのだろう。
俺が望むように、その魂を包んでいたのは、過去にとらわれて、自ら目をおおって歩く俺への哀れみでしかなかったのだと…俺はいやおうもなく気づかされている。
彼女の声が、りんと豊かに響く。
「お兄様、真実は、私が必ず伝えます」
「…ああ」
「御心配なく。私一人の力はちいさいですけれど、きっと皆様の協力をあおいで、この戦いは静まりますわ。
真実さえ、あれば」
そう言って、彼女は俺を見た。
研ぎ澄まされた魂に体を支配された彼女の瞳がまぶしい。
そしてその瞳の中に、一割程ひそんでいた別の輝きに、俺は本当は気がつきたくなかった。
穏やかなはしばみの奥に、無限に広がるのは、夜明けの直前の、深く空をおおう青。
守るべき次の運命を定めたことを、潤んだような輝きは如実に語っていた。
一抹の寂しさ。
うまれてより十数年を見守り続けて、磨きあげた珠を、結果として俺は、見も知らぬ誰かに放り投げた。
誰も、それを受け取らぬと言うことはないだろうという、打算も若干はあったかも知れない。
願わくば、受け取らん手が、色も輝きも傷もそれとして、ただその手の内で温めてくれるように。
支度を再び整えて、彼女は再び、高雅さこの上ない王女の姿になった。
理想の姿を求めて、はたしてその通りに、天使妖精もひれ伏すその姿に、俺は呆然とする。
これが、彼女の本当の姿だったのかと、俺は言葉を失うよりなかった。
限りなく清らかに、毅然と立ち、そして艶やかに。
俺は、「器」であることを、彼女に強いていたのだろう。
俺が望むように、その魂を包んでいたのは、過去にとらわれて、自ら目をおおって歩く俺への哀れみでしかなかったのだと…俺はいやおうもなく気づかされている。
彼女の声が、りんと豊かに響く。
「お兄様、真実は、私が必ず伝えます」
「…ああ」
「御心配なく。私一人の力はちいさいですけれど、きっと皆様の協力をあおいで、この戦いは静まりますわ。
真実さえ、あれば」
そう言って、彼女は俺を見た。
研ぎ澄まされた魂に体を支配された彼女の瞳がまぶしい。
そしてその瞳の中に、一割程ひそんでいた別の輝きに、俺は本当は気がつきたくなかった。
穏やかなはしばみの奥に、無限に広がるのは、夜明けの直前の、深く空をおおう青。
守るべき次の運命を定めたことを、潤んだような輝きは如実に語っていた。
一抹の寂しさ。
うまれてより十数年を見守り続けて、磨きあげた珠を、結果として俺は、見も知らぬ誰かに放り投げた。
誰も、それを受け取らぬと言うことはないだろうという、打算も若干はあったかも知れない。
願わくば、受け取らん手が、色も輝きも傷もそれとして、ただその手の内で温めてくれるように。
575: 名無しさん 2021/09/20(月) 17:45:20.93
>>574
長いから3行で
長いから3行で
584: 名無しさん 2021/09/20(月) 17:54:43.37
>>575
ラケシス母(故人)への叶わない恋を拗らせたエルト兄、ラケシスを身代わりにして妹を嫁に行かせない
ラケシスは脆弱な兄に同情して側にいてあげるし慰めックスも受け入れる
兄という楔から解き放たれて羽ばたこうとするラケシスはどこまでも気高く高貴で、自分に釣り合わない存在だと気付いてエルト兄ショック
ラケシス母(故人)への叶わない恋を拗らせたエルト兄、ラケシスを身代わりにして妹を嫁に行かせない
ラケシスは脆弱な兄に同情して側にいてあげるし慰めックスも受け入れる
兄という楔から解き放たれて羽ばたこうとするラケシスはどこまでも気高く高貴で、自分に釣り合わない存在だと気付いてエルト兄ショック
599: 名無しさん 2021/09/20(月) 18:02:04.41
>>584
目は滑るが内容はわりとまとも(まともじゃない)というか読み応えありそうだな
後でじっくり読んでみるわ
目は滑るが内容はわりとまとも(まともじゃない)というか読み応えありそうだな
後でじっくり読んでみるわ
引用元: http://anago.2ch.sc/test/read.cgi/applism/1632101095/
まとめ
ラケシスさんのSSが投下されるwwwwwwww←尊い…
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