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【SS】「ただいま……」静まり返った客間に、さなの小さな声は吸い込まれた。

883: 名無しさん 2020/12/20(日) 07:52:56.51
「ただいま……」
静まり返った客間に、さなの小さな声は吸い込まれた。
やちよは仕事、鶴乃とフェリシアは万々歳、いろはとういは買い物をして帰ると予め聞いていた。
だからこうして誰かを驚かせないようこっそり帰宅する必要も無い。だが実家にいた頃の、今では恥じている癖が勝手に出てしまっていた。
誰もいない時で良かった、そう胸をなで下ろしたさなはすぐ自分の間違いに気づいた。
「やちよさん……?」
見慣れた足首がソファから突き出ていた。おそるおそる回り込んださなの目に、ソファで眠るやちよが映った。
テーブルにはハンドバッグを放り出し、前の床には靴下も脱ぎっぱなし、どうやら帰るなり横になったようだった。
「やちよさん、とても疲れたんだ……」
静かな寝息を立てているだらしないその姿は初めて見るやちよだった。さなは無意識に自身を透明化させ、それをじっと見つめていた。
が、やがて思い出したように目を上げると、さなは毛布を部屋から持ち出すとやちよに掛けようと近寄った。
「あっ」
その時だった。寝ていたと思ったやちよのが少し呻いたかと思うと、その腕が目の前に来ていたさなの体に伸びていた。
「…………!」
逃れる暇もなく、さなはやちよに抱き締められる形となっていた。厚くない毛布を挟んで二人は密着していた。
やちよの顔がすぐ真横にあった。嗅いだことの無い香水や化粧品に混じり、汗の匂いを感じたがそれが二人のどちらのものかは分からなかった。
耳にやちよの静かな吐息が聞こえる。それと連動してお腹が上下に律動する。さなは息を殺し、やちよの脈動を全身で感じ取っていた。
ヴヴヴヴヴ……
その時間は、やちよの携帯に届いたメールの音で終わりを告げた。
「……ん……え?二葉……さん?」
「はい……」
目を覚ましたやちよは一瞬呆然としていたがすぐに我に返りさなを解放した。
「ごめんなさい、私寝ぼけてて、今日の撮影すごく疲れてたみたいで、昔は抱き枕を抱いて寝てたから多分それで間違って二葉さんを」
悪事を見つかった子供のように謝罪と言い訳を繰り返すやちよ。その姿もさなにとって初めて見るもので思わず微笑していた。
「あの、やちよさん」
「え?」
「私、抱き心地悪くなかったですか?重くありませんでした?」
気がつくと、そんなからかうような言葉が口から出ていた。やちよは面食らった顔をしてしどろもどろになった。
「えっ……いや柔らかくて軽かったし、ってそうじゃないわね……ええと、ふ、二葉さん……?」
やちよがさなを伺うように見た。さなは自分でも次に何を言うか全く想像もつかない中で口を開いた。
「私で良ければ、またやちよさんの抱き枕にしてもいいですよ」
この時から、さなとやちよ二人の秘密の日々が幕を開けたのだった。

 

887: 名無しさん 2020/12/20(日) 08:40:31.58
>>883
続きを…

 

898: 名無しさん 2020/12/20(日) 09:44:51.97
>>883
普段附属交尾ショーとか日記破り捨てるなんて言ってるのに純愛も書けるのか、やるじゃん?

 

919: 名無しさん 2020/12/20(日) 10:21:14.13
>>883
この幸せな時間が水名か実家で失われる展開に期待している

 

 

引用元: http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1608239062/

まとめ
「ただいま……」静まり返った客間に、さなの小さな声は吸い込まれた。

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